マネジメント
P.Fドラッカー、1974年初刊 ダイヤモンド社
変わらざるもの、それは基本と原則(寺岡晟)
P.Fドラッカー、1974年初刊 ダイヤモンド社
変わらざるもの、それは基本と原則(寺岡晟)
ドラッカーの「マネジメント」は、マネジメントの原理原則、言葉を変えれば、「本質」を追求したものです。
今更のドラッカー、されどドラッカーです。私は、マネージャ必読の本だと心底思っております。それも一回読めばよい、というものでなく、日々のマネージャの中で、壁にぶつかったとき、迷ったとき、あるいはちょっとした余裕の時間に紐解く本だと思います。
私が、様々な企業の管理職研修の際、必ず問いかけることは「ドラッカーのマネジメントを読んだ方は?読んでいない方は?」です。
私は、マネジメントを実行する上で大切なことは、「ブレないこと」だと考えます。
日々のマネジメントを実行する上で、様々な障害や課題が生まれます。
そのようなとき、リーダーが手足をバタバタして慌てふためいていたら、部下は混乱し、組織は崩壊します。
マネジメントを実行する上で「何が大切なことか」「何をしてはいけないか」を示唆している本が、この「マネジメント」です。
ドラッカーの言葉には、ハッさせる、あるいはじっくり考えさせる言葉が随所に記されています。
「マネージャの定義とは、命令する権限ではない、貢献する責任である」
ある企業のトップは、管理職に登用し、辞令を手渡す際に、声を大にして読み上げるそうです。
「マネージャには二つの役割がある。第一の役割は、部分の和よりも大きな全体、すなわち投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す生産体を創造することである。それはオーケストラの指揮者に似ている。
指揮者の行動、ビジョン、指導力を通じて、各パートが統合され生きた音楽となる。マネージャは自らの資源、特に人的資源のあらゆる強みを発揮させると共に、あらゆる弱みを消さなければならない。
第二の役割は、そのあらゆる決定と行動において、ただちに必要とされるものと遠い将来に必要とされるものを調和させていくことである。」
この二つの役割を具体的に明らかにしていくことが、マネジメントを意味しています。
また、ドラッカー曰く「効果的な意思決定とは、行動と成果に対するコミットである。」
※コミットメント(Commitment)確約した目標に対して責任を持つ
そして、「意思決定のなかに実行の手順や責任を組み込んでおくことも必要である。決定を実行に移すためには、次の問いに答えねばならない。
①「この決定を知らねばならないのは誰か」
②「とるべき行動は何か」
③「それはなぜか」
④「行動をとるべき者が行動できるためには、その行動はいかなるものでなければならないか」
マネージャは、日々意思決定を求められます。
何かをしよう、目指そう、と意志決定したら、成果(結果)を導き出すためには、マネージャ自身と部下が行動することが必須です。
そのための指針となる言葉ではないでしょうか。
最後に「コミュニケーション成立4つの原理」の中に、以下の言葉が記されています。
「コミュニケーションを成立させるものは、受け手である。
コミュニケーションの内容を発する者ではない。
・・・「大工と話すときは大工の言葉を使え・・・
コミュニケーションは単なる手段ではない。
それは組織のあり方であり、その人の在り方を問われることである。」
部下の目線に立って、かみ砕いて伝え、聞くということです。
ともすると、一方通行になりがちなマネージャは意外に多いものです。
いい意味で自重自戒の言葉だと思います。
私は、「コミュニケーション成立4つの原則」は、マネジメントのみならず、営業活動にも適用される原理だと考えます。
お客様との信頼関係が深く、親しまれる営業パーソンは業績もよいものです。
お客様の立場に立ってわかりやすく伝え、聞くことでビジネスは成り立つと思います。
繰り返しですが、既に読んだ方、まだ読んでいない方、手に取ってどこからでよいですから、読むとハッと気づかされること、共感できることが必ず発見できます。
最後に「マネジメント」の文中にこのような厳しい言葉が記されています。
「社会や経済は、いかなる企業をも一夜にして消滅させる力を持つ。」
「企業は、社会や経済の許しがあって存在しているのであり、社会と経済が、
その企業が有用かつ生産的な仕事をしていると見なす限りにおいて、その存続を許されているにすぎない。」
経営者はもちろん、マネージャとして心しておく言葉です。