明治日本体験記

W.E.グリフィス 平凡社刊

変わらぬ日本人のDNA(寺岡晟)


グリフィスは、明治日本のアメリカ合衆国出身のお雇い外国人である。

専門は理科教師であり、牧師でもあった。

明治時代初期に来日し、福井と東京で教鞭をとった。

帰国後は著述家、日本学者、東洋学者として活躍した。

「明治日本体験記」は、アメリカ人青年教師が日本滞在中、江戸時代がまだ色濃く残る日本から感じ取った、感動と驚きの日本滞在記である。

 

「1870年12月29日、船の窓から目を喜ばす陸地が見えた。東から夜明けが陸地に暗示に富む光をいっぱいにふりまき、この日出ずる国が地上で最も美しい国のひとつだという信念にかりたてられる。船が進む。目の前の景色が次々と繰り広がる。

起伏の多い平野は高い所までびっしり耕作されていて、村々が散らばっている。その平野の後ろには重なり合った山の曲がった背中が横たわっている。

はるか遠くに雪の衣服を着た山の女王が澄み切った空気のため思い違いをするほどに近く見える。この比類のない円錐型の山は眺められ愛される。

これほど完璧で、これほど一生忘れ難い眺め、1日で栄光と新鮮を強く感じさせる自然の傑作という評価を引き起こすのに、これほどふさわしい眺めは、おそらく近づく汽船から望む富士山以外にないであろう。その巨大な姿は徐々に日の光を浴びて、やがて日出ずる国は金色の栄光の中に姿を現す。最初の出会いで、このような光景を見るのは本当に嬉しい。」

まだ29歳の青年教師グリフィスのその時の胸の高鳴りが伝わってくるようだ。

そして1871年1月2日、グリフィスは外国人居留地の横浜から馬車に乗って江戸を目指す。途中で見かける日本人の様子、街並み、グリフィスの好奇心は高まる一方である。

「朝霜が降り、空気は身を切るように冷たい。雲ひとつない晴れた空。江戸湾は日光を浴びてギラギラ光っている。青い空、青い海、青い山、白い富士。

横浜を出て東海道と結ぶ街道に出る。

真の日本が見えてくる。すべてが珍しい。百眼の巨人になりたい。百も眼があればどんな景色も見えるからだ。詩人になって見るものすべてを表現したい、画家になって描きたい。日本語がわかっていたら何でも質問するのに。

何と素晴らしい絵本。村が道路に沿って一列に並んでいる。それは大きな彩色された巻き物を見るようで、そこには楽しい、光り輝く、ゆかいな、悲しい、不快な、恐ろしい、奇妙な、滑稽な、嬉しい絵がいっぱい描いてある。

何と可愛い子供。まるまると肥え、バラ色の肌、きらきらとした目。

家は小さくたいてい一階建てで、商人の耐火性の土蔵の外はみな木造である。

家の中はきれいにしてある。床は地面から1フィート高く上げてある。