ピラミッドを前に

2017年のスタートです。
明けましておめでとうございます!
英国のEU離脱、大量の難民問題、無差別テロ、米国の大統領選の番狂わせ、そして小池都知事の誕生等々。
昨年は予想外の出来事の多い年でした。
そして、この20日には、世界が注目する中でトランプ大統領の誕生です。
今年も予想外の出来事があるやも知れませんが、ここは軽挙妄動せず、泰然自若とした行動が大切だと、改めて自戒しております。

さて、僕は昨年末に従前より念願だったエジプトに旅して参りました。
小中学校時代に地理や歴史の授業や少年雑誌で耳にし、目にしたピラミッドの国です。
今もそうですが(笑)、多感な少年だった僕にとって心惹かれるエジプトであり、ピラミッドでした。
取り分け、ここ数年、僕にとってエジプトは「一度は行ってみたい国」の筆頭に挙げられる国でした。
しかし、悲しいことにアラブの春以来、政情不安が続き、反政府デモ、テロ、とエジプトの混迷は日常的なものになってしまいました。
従って、エジプトを訪れるチャンスは遠のく一方でした。
新聞やTVでエジプトの記事や映像が流れる度に、「当分、行けそうにもないなぁ」とため息混じりの言葉が出てしまいがちな僕でした。
そんな折、11月のある日の日経夕刊の広告に眼が止まりました。
そこには「エジプト8日間の旅:ナイル川クルーズとピラミッド探訪」と何とも魅惑的なキャッチが記されていました。
内容を読み進めると、益々僕のアドレナリンが高まるのでした。
「エジプト航空のルクソール直行便にてルクソールへ、そしてナイル川クルーズ船でゆったり3泊かけて主だった遺跡を訪ね訪ねてアスワンへ。そして砂漠を約300㎞走り、アブシンベル神殿へ、そして空路カイロへ飛び、夜明け前のピラミッドを訪ねる」
この広告は、僕のアドレナリンを嫌が上にもピークに達しさせたのです。
「今しかない!」
それから一月後、PM10時過ぎのルクソール空港に降り立った僕でした。
ルクソール、アスワン、そしてアブシンベルのことは別の機会に譲るとして、ここでは念願のピラミッドのことを記したい。
2016年12月17日早朝6時、僕はカイロ郊外のギゼにあるピラミッド群の前に立った。
僕の眼の前から300mくらいだろうか、3つのピラミッドが凛と聳え立っている。
最も大きいピラミッドがクフ王、その右隣にメンカフラー王、左隣はカフラー王のピラミッドとガイドブックに記されている。
ピラミッドの周囲は、木一本見当たらない砂漠だ。
まだ陽が昇らないため、ピラミッドも砂漠も黒く見える。
僕の周りには日本人ツーリストが4~50人。
(特定のツアーだけが一般入場前にピラミッドエリアに立ち入ることが許された)
朝の冷気が冷たいせいもあるが、皆押し並べて静かだ。
大声を上げる人はいない。
僕もその一人だ。
声が出ないのだ。
東の方角が少しづつ明るくなってきた。
ここではカイロの喧騒も聞こえて来ない。
鳥も飛んでいない。
シーンと静まり返っている。
僕は真正面に見えるピラミッドをひたすら見続けた。
彼のナポレオンが兵士を前に「兵士諸君、4000年の 歴史が見下ろしている」と言ったピラミッドが今、僕の前に在る。
風が出てきた。
「寒い」
僕はスカーフを首に巻いてピラミッドを見続けた。
空がようやく白んできて、まだ星や月が薄く青白くまたたいている。
今は夜と朝の間。
世界の目覚めを体感する瞬間でもある。
突然、黒々したシルエットのピラミッドの色が変わった。
顔を出しかかった太陽の日差しがピラミッドに当たり、反射して黄金色に輝き出した。
「おおー」僕は思わず声を出した。
周囲のツーリストの人たちのあちこちからも感嘆の声が聞こえてきた。
四角錘の東面は黄金色、南面は黒色のコントラストは人がつくり出したピラミッドと自然のコラボだ。
「感動」という言葉が浮かんできた。
僕のこれまでの人生で初めて見る景観である。
これまで写真と映像で見たピラミッドが、今僕の眼の前にある。
夢を見ているんじゃないんだろうか?
これが現実だと、頭ではわかっているけど、中々現実感が湧かない。
これまで何年も、いや何十年も思い描いていた世界だからそうなのか、夢を見ているような気持ちになる僕だった。
「来てよかった!決心してよかった!」
素直にそう思う僕がここにいる。
そしてピラミッドの荘厳な美しさと力強さは、あらためて人類の貴重な遺産だと再認識した僕だった。
4500年前のエジプト人は太陽を信仰の神と仰ぎ、信仰したそうだ。
そして4500年後の今、朝陽が創り出す黄金色のピラミッドを見つめながら無意識に手を合わせている僕がいる。
手を合わせながら僕は、永年の夢が叶えたことへの感謝と共にこれからも自分が果たすべき役割を思い、実行を心に誓った。
気がつくと朝と夜の間は過ぎ去り、朝陽がピラミッドを、そしてそれを取り巻く砂漠を、そして僕たちツーリストを黄金色に染め上げてくれた。

2017年のスタートです。
輝かしい1年にしましょう!